【小説】影市場/なかがわひろか
 
 あちこちの地面に張り付いた影たちが一斉に声を張り上げる。
  
 「細身の影はこっちだよ。ちょいと太めのあんさんも、きれいなシルエットに写してあげるよ。」

 「おちびちゃんはこっちへおいで、背高のっぽはこっちだよ。」

 ここにはいろいろな理由で影を失った人たちが、新しい影を求めてやってくる。
 
 借金の肩代わりに影を奪われた人。
 気の狂った愛人に影を殺された人。
 中には影踏みのしすぎで、影を踏み殺された子どももいる。

 なんらかの形で影を失った人もいれば、同じような理由で宿主を失った影もいる。
 そんな両方の需要を満たすために、この影市場
[次のページ]
戻る   Point(2)