水ノ鏡/服部 剛
 
Tシャツに汗の滲む 
夏の朝 
長方形の紙パックに入った 
烏龍茶を 
ストローから吸いこみながら 
けだるい道を歩いていた 

全力で走った後ならば 
あっという間に飲み干して 
少ないと感じただろう 
今朝はなぜか 
吸っても吸ってもなくならない 

夢のような一瞬のひと時と 
間延びした重たい時の間の 
どちらでもない場所に立つぼくは 
陽炎の揺らめく道の上に
立ち止まったままうつむき 

水溜りに映る 
のっぺらぼうの黒い顔を 
覗いている 




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