夏花/愛心
 

知らない内に咲いたんだ

夏花

柔らかなぴんく色をした

まるで、夏休みに恋をした

小さな女のコみたいで

緑色の細い腕を

一生懸命絡み付けて

この夏、最後の恋命を

たったひとりで

咲かし尽こうと誓ったんだろう

時が流れた

夏休みの終わり

茶色く咲き終えた

夏花

それでも

ぱりぱりの細い腕は

あいも変わらず、絡み付いていて

あまりの健気さに

つい、触れてしまった

彼女が崩れ落ちる

ぱりぱりという音が

ふたりを祝福する、拍手に聞こえて

私も手を叩いたのを

今でもよく覚えている
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