忌々しきは恋の凶事/錯春
ず
僕はもう半ば諦めかけて最寄の神社へ行き着いた
ふと 御神木の麓へ目を向けると
青白く発酵する茸がいっぽん、ひょろりと生えていた
あわや、と駆け寄り掘り起こすと、赤いリボンと一房の黒髪に包まれた蝉の蛹が出てきたではないか
春志乃さんのセーラー服にはためいていた それであった
もう手遅れであったのだ
彼女は想い焦がれて蝉になり、こうして冬虫夏草に寄生され、その花のような魂に、暗い帳を下ろしてしまったのである
ああ やるせない なんとせつない
一体どこの野郎が彼女をこんな姿に変えたのだ
僕は柄にも無くめそめそ泣いた
めそめそ泣いたはずなのに、零れるのは
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