放熱/
松本 卓也
焼く陽光の下に佇んで
思い出す君の視線は僕を向いていない
いつか最後に言葉を交わした昼
いつか最後に君の中で果てた夜
大切に抱えていた価値ある時間
秒針は無情に切り崩していく
忘れなければいけないと思うほど
深く無意識に思い出していた
震えながら沈み行くふやけた夕陽に
悠然と君は掻き消えていく
僕は一滴だけ涙を零し
もう何度目かは忘れたけれど
今迄で最高の確信と
今迄で最低の愛情とを
無言の別れに込めて
解き放て
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