向日葵の声援/服部 剛
早朝の蝉達は
すでに目覚め
茂る緑の木々に隠れ
全身を震わせ、鳴いていた。
無人の母校の校庭で
跪き、両手を合わせ
朝焼けの空を仰げば
悔し涙は搾(しぼ)り落ちる
( その時
( 遠い山奥から
( 新たな一日の
( 幕開けを告げる鐘の音が
( 幾度も鳴り響いた
ふぬけた役を演じた
昨日の自分を思い出し
拳を握り、立ち上がる。
( 校門を出て
( 細道を歩く
( フェンス越しの観客席に並ぶ
( 老若男女の向日葵(ひまわり)達は身を揺すり
( 行方知らずの今日へ向かって
( 静かな炎を胸に秘めて歩くぼくに
( 無数に開いた草の両手を振っていた
いつもの駅へと続く
階段を上り
遠い緑の茂みから聞こえる
蝉達の合唱を耳に
券売機の口から差し出される
「 今日という日の乗車券 」
を手に取り
ポケットにしまった
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