夜のプールサイドで君は/ふくだわらまんじゅうろう
 
かった母親への胎内回帰への郷愁への懐かし寂しいへの
水深を求めて求めて求めて
誰彼に理解されようと理解されまいと理解されたくもなかろうとあろうと
水中の
ひと掻きひと掻き
我を掻く
自分の内面の壁面を
血の滲むこの爪で掻きに掻き
掻きに掻き
そして結局、辿り着けなかったからここにこうしてこんな体たらくでいるのだけれど
だけど俺は本当に
積極的にも
消極的にも
本当にこれで死んでもいいのだと
本当にこれで死んでしまいたいのだと
本当にこれで死んでしまえたらと
思って、ひと掻き
夏を
掻く









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