かげろうと檜の木笠/モーヌ。
いつか 夏を 見たので 夏のことを ものがたり
旅を したので 旅のことを ものがたる...
やまと 吉野の 山なか で
灼熱した 午後 数刻の 焦点は ひび割れて
ゆるされた 一顆を スカッシュ すると
それは ゆびの 間から こぼれ 落ちて
ぼくは 西行庵へ ゆくのを あきらめる
( たぶん もう 来れないだろう... )
そこからは いく枝にも すきとおって
道は 走狗 している ようにも 見えた
竹林の 道の むこうは 木の下やみの 山森で
奥の 奥へ 西行庵は ある はずだ
( あまりに とおく )
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