かげろうと檜の木笠/モーヌ。
 



いつか 夏を 見たので 夏のことを ものがたり

旅を したので 旅のことを ものがたる...

やまと 吉野の 山なか で

灼熱した 午後 数刻の 焦点は ひび割れて

ゆるされた 一顆を スカッシュ すると

それは ゆびの 間から こぼれ 落ちて

ぼくは 西行庵へ ゆくのを あきらめる

( たぶん もう 来れないだろう... )

そこからは いく枝にも すきとおって

道は 走狗 している ようにも 見えた

竹林の 道の むこうは 木の下やみの 山森で

奥の 奥へ 西行庵は ある はずだ

( あまりに とおく )

[次のページ]
戻る   Point(13)