「ラブアンドピース」に対する異議申し立て/佐々宝砂
 

>永遠に手に入らぬものだと認めたくないから

これは、もっともらしく耳に響くが、嘘だ。愛と平和は刹那であれば人の手に入る。もちろん愛と平和は永遠には続かない。しかし永遠に続くものなどあるのか。有限な生命しか持たぬ人間が、永遠などという言葉をこのような場面でさらりと使ってしまっていいのか。さらに言おう。有限な生命しか持たぬわれわれは、有限な愛と平和で満足すべきではないのか。人は誰しも、ごく小さな、時間的にも空間的にも限られた世界でなら、愛と平和を手に入れることができる。どんなつまらない人間も愛するものをひとつくらいは持っている。愛の対象は人でなくともよい。昔の写真、拾ったビー玉、飼猫、四角く切り取られた青い空。ささやかな世界で人は一瞬の平和を持つことができる。われわれのささやかな努力は、その有限な愛と平和をほんのわずか広げる。ほんのわずかだが、それは時間と空間に対する小さな小さな勝利であり、私はその勝利を認めたい。

だから私は、「ラブアンドピース」という詩を認めない。
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