昼間の父さん /
服部 剛
路面に陽炎(かげろう)ゆらめく
真夏の正午
長袖の作業着に
ヘルメットをかぶる
眼鏡のおじさんは
汗水たらし
鉄パイプを担(かつ)ぐ
路面には
夏空を仰いだまま
力尽きた蝉(せみ)
焼けつく日射しに干からび
ぴったりと時間(とき)を止めた
亡骸(なきがら)の周囲に
おじさんの
汗のしずくが
ぽとん、と落ちた。
家で待つ
可愛い妻や子のために
今日も明日も明後日も
鉄パイプを運ぶ
おじさんの背中
陽炎の向こうに
滲んでゆく
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