dumb/大覚アキラ
地下鉄のホームで
女子高生がケータイで喋っている
と思ったのだが
よく見てみると 女子高生のように見えたのは
等身大の女子高生型ケータイストラップで
空中に浮いたケータイからは
小さなノイズが洩れ続けているだけだった
ノイズはまるで
「助けて 助けて 助けて 助けて」と
繰り返し呟く声のように聞こえた
数ヶ月前に認知症だと診断されたおじいちゃんが
昨日の夜 電話をかけてきて
「なあ わしは インターネットに行ってみたいんだが
おまえは行ったことがあるんか」と訊ねた
ある と答えると
「今度行くときは わしも連れてっておくれ」と
さびしそうに言った
真夜中にコンビニに行ったら
客も 店員も みんなマネキンだった
肌色の硬い皮膚は
ひび割れてあちこちが剥がれて
安っぽいお化け屋敷みたいだった
「おまえのことをしっている」
というタイトルのスパムメールが
毎日のように届く
きっと インターネットは
誰にも繋がっていない
ぜんぶ 絵空事
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