樹/渡辺亘
 
樹を植えよう
できれば楡がいい
私たちが何千回もけんかして
仲直りする間に
樹は大きくなるだろう

やがて子供ができ
大きく育つころ
樹も大きくなるだろう
私たちは木陰で
ランチを食べるだろう

そのうちに私たちは
おじいおばあになって
樹がこんなに大きくなったことも
忘れてしまうだろう
樹はその頃
天と地を結ぶ架け橋となっている
人の形をしているそれは
天地の力を循環させる力を持つ
私たちは樹を植えたことさえ忘れて
涼しい木陰で居眠りをする
私たちが死んでも
未だ樹は天地をつなぐ架け橋だ
私たちの子供や孫の
行く末さえ見守っている

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