微熱/見崎 光
 
余韻は鮮明に
昨夜の熱気を絡ませる
臆病風は自然に溶けて
二人の視線を交差させていく
互いの笑顔を抱きしめた
霧の繁殖する蒸し暑さ
それすらも愛しいほどに
胸の高鳴りは
あなたを求めて止まない

気付けばすぐそこに
あなたはいて
なかなか切り出せない会話を
懸命に探しては
必死に紡いでいた
震えだす体を隠して
走らせた言葉
隣で触れたかすれた声と
微熱の壁が肌を掠める

あんなにも近くで
あなたと刻んだ時間
祭りの夜の雑踏など
耳に残るはずもなく
記憶の残像は
あなたが独り占めのまま
リピートされていく

諦めかけた恋を
盛大に盛り上げて祭りは
終わりを告げた
けれど
“キッカケ”という贈り物を
無駄にしないよう
あなただけには
素直なわたしでいようと思う

祭りと囃子
あなたとわたし
誰にもこの心を攫われないように
もっともっと
あなたの虜にしてください
胸の内を明かす時がくるまで…



『あなたを、愛しています。』












戻る   Point(3)