◆美しいよる/千波 一也
不可思議と呼び捨てるにはまだ早い
猫の目うるる、美しいよる
いくすじも星をえがいてよるが降る
ふたつ並んで揺られあう尾に
滅びても興り続けた王国をたどり違える満月のした
どこまでを出口と決めれば良いのだろう
実るともなく色あざやかに
受け継いだおとぎばなしを燃やすよる
灰になるまで朝日は来ない
にせものの兎が告げる時刻には男が匂う
「孤独だ、みんな」
腕に抱く女の匂いにかばわれて狼の意は浅く眠れる
天空の花かもしれない爪に射す梯子の途上であい狂い咲く
戻れない場所はどこかと問うている
言葉の
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