車なんて発明されなければよかったのに/円谷一
 
この街では交通事故で他人の命を奪ってしまった人間達が交通手段としてバスを利用している もちろんこの街には同様の理由で人の命を奪ってしまった人間しかいない 君の家まで行くのにどうしてもこの街のバスを乗らなければならないのだ この街は僕の街と君の村の狭間にある 電車も地下鉄も走っていないからこの牢獄のような陰惨とした街を嫌々通らなければならないのだ


よってこの街を走る車もバスしか無い それか自転車のみだ 天皇がお考えになった決まり事で 随分適当に空いている土地を見つけて交通刑務所を出た後の行き先に街として発達させたのだった 近辺に住む人々は不満を漏らしたが誰も反対する者はいなかった


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