<スランプ亭にて>/ポップこくご
店を出るときが来た
うだうだと四の五の言わず
明日こそは 明日こそはと 一日の締めの言葉にせず
今やるのだ 今こそ頑張るのだと 全身をこわばらせず
大きな深呼吸もせず
全身を鼓舞するBGMも聞こえなくなった
マスターにチェックを告げる
今までツケにしていた
ため息 言い訳 愚痴 嫉妬 焦り そして絶望の数
マスターの差し出す紙片にはひとこと
「踏み倒せ」
そして何事も無かったかのように朝日に向かって扉を開ける
たとえ事情のわからぬレジの店員が血相変えて追っかけてきても
構うことはない
笑いながら逃げ切ってやるのだ
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