失明真実/ひげ爺@雲夢任
ピントが合った顕微鏡を覗いてみた
初めて見るそれに興奮した
興奮してつまみを回した
それに近づきたかったから
でも駄目だった
鈍い痛々しい叫びでレンズは砕け
「真実」だったそれは「真実?」へ変貌して
やがて「事実」という肉片に変わってしまった
その肉片は生命力を持ち
カミの加護に守られて
ミミズとなって粘液の落書きを残していった
落書きは錬金術師を気取る魔物によって
遠くに運ばれていく
まるで見てきたかのように現れたそれを
過食症のヤギたちが噛みしめてのみこむ
伝書鳩を飛ばしボヤキの魚にしてつまむのだ
「山の人海の人」という
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