あるいは、あめからの呼びごえ/月見里司
 
光沢のある幹と葉は微動だにせず、全ては白く、薄明るく濁っている。蝋かと疑ったが、蒸散が、命の存在感を示している。霧雨が降っている。ますます弱まるそれは、しかし確実に全てを濡らす。薄明るい闇の中で、体温は奪われてゆく。膝を抱えて座り込む。寒さに耐えかねた、子供のよう。夜が長い。


/雨乞う

 長雨の季節は、今日も曇りで、蓋をされたような空気は冷めて、乾ききり、アパートの裏庭はひび割れて僅かな風にすら埃を舞い上げる。枯れゆく雑草に、滋養を与える事になっても、水を撒くほかなかった。持ち出したじょうろを満たし、裏庭に薄く、できるだけ広く、撒く。
/くすくす、と声。投げられたいちご味のドロッ
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