無人駅/悠詩
 
闇に川音の迷う硲(はざま)の村
トンネルに切り取られた高架橋
しじまを蹴散らしていく道しるべ
硲(はざま)に閉じこめられていた記憶が目を覚まし
一瞬顔をしかめるも
手招きに不安を煽られ
闇の入り口へと消える


目を眇(すが)めた階段の前には
砂時計の底から落ちてきた
乗車券引換券発券機
息を殺して俯いている

ふにゃりと崩れそうなボタンは
押したら悲鳴を上げそうで恐い
噛まれて血が出て
吸い込まれるかと思ったけど
触れると同化は拒まれた

吐き出されたひとひらの紙

ねえ
願うだけなら簡単なの
それなのに
こんなに胸が痛むなんて
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