数多のあなた/ワタナベ
数多のあなたから
発信されることばに
わたしは固くまぶたを閉じる
それらを愛さないために
西側の、部屋
窓に切り取られた風景のなかで
遠く稜線がたそがれてゆく
そう
書いたときにはすでに
稜線は稜線ではなく
大学ノートの余白が
網膜に焼きつく
反転
退屈な授業中
いかにも古文という顔の好々爺が
文法についてのんびりと語っている
大学ノートの余白に
「アリス」と書く
「アリス」はみるみるうちに
空色の服と金色の髪をした小さな「アリス」になって
大学ノートの上を走り回る
アリスは背丈ほどもある僕のシャープペンを
両手でよいしょと持ち上げると
よ
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