「球の描き方」/ソティロ
そのひとは決まって話を逸らした
理由は今でもわからないままだ
きっとかつて月で何かあったのだろう
という想像が慰める
うさぎの目だ
赤い
手をつなぐ
それはそのころ
ぼくとそのひとにとって
特別すぎることになってしまい
そう易々と行えない仕草になっていた
触れた瞬間
戻らなければならなくなる
そして戻れなくなる
たぶん捨てることはないけれど
すこし早すぎた
あのさ、
球の描き方を知ってる?
知らない と
すぐに応えた
どんなに工夫して陰影を施しても
ほどこされても
それは円(まる)にしかみえなかった
そのひともそうなのだろう
ぼくらのいる次元では
どうしようもないことなのだろう
不可避と不可逆とで
青く染まってジエンド
でももしもその秘密が解けたら
ぼくはその球をきっと青く塗る
戻る 編 削 Point(17)