頭脳ホテル’81/石原大介
最上階のプライヴェーエト・ジァアグジィーの
黒い鉤型の湯出口に
バラいろのヤモリどんがつっかえている
赤ん坊のように柔らかな爪のはえた
短い後ろ足をじたばたさせ
水道管の奥へ奥へと身をよじらせている
日勤夜勤で最高にクールなコンディションの俺様ってば
きわめて反射的職人的手さばきでひとまず
熱湯の水圧を全開にし
業務用洗剤の原液をうえからポリケースごと浴びせかけると
デッキブラシの柄の先をねじり込み
奴さんを引きずり出さんと試みた
のであったが
黄色い斑点の尻尾をビクビクビクンッとわななかせ
バラいろのヤモリどん
なんだかすんごいうれしそう
でしかもよく見るとそのつ
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