盆ノ夜 /服部 剛
今日は盆の入りなので
夜家に帰り門を開くと
家族は敷石の一つに迎え火を焚き
両手を合わせ
揺れる炎を囲んでいた
初老の母ちゃんが
「 お爺ちゃんがいらっしゃるわよ 」
と自然な口調で言うので
両手を合わせたぼくは
( ごゆっくり )
と心に呟いた
まだ会ったことの無い
ぼくの「お爺ちゃん」は戦後間もなく病に倒れ
初老の親父が子供の頃に
「 お父さん、お父さん・・・! 」
と叫んだのも虚しく
無念の想いでこの世を去った
腕で涙を拭う子供の頃の親父が
曇りガラスの前に立つと
ぼんやりと白服の人の面影が
夜の闇に浮か
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