ちぢにみだれる/竹節一二三
 
水面をゆらしながら
初夏のかぜが吹きすぎる
こいびとの手をひいて
堤防をころげた

草についた水滴はあまくひかる
さかなが跳ねてぱちゃんと音をたてた
はねまわる ころがる
だきしめる つかまえる
茶色の髪をみだして
わたしはくさむらに沈む

空はあおく風はすずやか
草をすかしたむこうは遠い
わたしはちいさくちいさくなって
空と地上の区別がつかなくなるまで
てのひらをひらいたりとじたりしながら
ひとりでどこかをあるいている
ふと手をのばすとこいびとが笑っていた

まるで知らない人のような橋のした
甘栗をほおばる
こいびとはかばんからトマトを出して
ひとくちかじる
みどりの液は服にちり
わらいごえが乱れて

波紋に
戻る   Point(8)