暗い日曜日/六崎杏介
 
薔薇食む墓場のランタンと
タルトタタンを焼く釜戸
薫る薪の火泣く音色
ネイビー展がる夜のビロード
溢れる熱の鳴咽の煤で
すっかり黒く、染まる空飾る
六花の星座は地下の骨
墓場に響く言い得ぬ声の
死したポエトの四肢を食む
ランタン揺らす、貴方に捧ぐ
タルトタタンを焼く香り
私を燃やす薪の赤い
瞬く目配せ、魔女狩る悦楽
欠落します足と、痛覚の間に
産まれし香りは薔薇の稚児
釜戸の四隅に蹲り
壊れた秤を火箸で叩く
タルトタタンを焼くリズム
ランタン揺らす冬の主
裸足の爪から垂る油の涎
形を亡くすヘクセの腹に
刺さる火箸に薔薇の声
吠えし黒馬の牽く馬車を
駆りし冬の主の刈りゆく御首
釜戸の四隅の薔薇の首
私の落とせし赤き恋
タルトタタンを焼く香り。
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