湿った日々/竹節一二三
 
ゆらりゆれゆく水面に
魚のかげはうつらない
深く沈んだ自転車の
かすかなひびきが ぽつり
雨をよび
あらしを誘う

梅雨の日々は湿っていて
すべてをひらたくさせる
私も 床も 土も
君も 風も 水も
すべて重なり一重におもく
空気の底に漂うばかり

ばら色の傘を
少女がくるくるまわす
黄色い長靴が
みずたまりをはねまわる
水滴はそらをうつしてあおく
梅雨だというのに
こどもたちは形をとどめている

どうか 愛して
ひらたくなりながら
私はいのり
かなえられずに朝まで沈む
戻る   Point(5)