催眠術/山中 烏流
灰色に染まる
明くる朝の空は
じっと、目を閉じて
眠りを誘っている
少し湿ったような
生温い風が、吹くと
慌ただしく舞っていた
木の葉たちまでもが
眠りについてしまった
しいんとした世界を
一人きり
背伸びをしながら
歩く
私だけが
息をしているかのような
錯覚を
覚えてしまう
(沈黙が
(少しだけ
(痛い
唇を尖らせて
ひゅう、と
風を吸い込んだあと
吹き出す
甲高く空を切る
細く強い音は
雲をも切り裂いて
するり、と
青を引き摺りだした
ふと気が付くと
先程まで眠っていた
木の葉たちは、ゆっくりと
顔を上げて
また
慌ただしく、舞い始める
(風の音さえ
(今は
(心地好い
いつの間にか空は
青く、青く
澄んでいた。
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