憂愁と倦怠/相良ゆう
今年も異常に暑い夏がやってきた
もう今では蚊帳を張る家もずいぶん少なくなってしまっただろうけど
蚊の煩わしさだけはきっとこれからも変わることは無いのだろう
今日もまた蟲の声が僕らを襲う
正義と平和と愛国と自由と平等を謳い
けれど
この鉛にも似た飽食の自我には
軽微で淡白で陳腐な科白など
響くはずも無く
表面だけ嘗め回しては消えていく
今日も選挙の街宣車が巷を駆ける
欺瞞という衣を纏った虫たちが
暴力と混沌と憎国と固執と貴賎を
高らかに謳い羽ばたきながら
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