授乳のひと時 /服部 剛
若い母の膝上に
抱かれた幼子は
ぐわ〜ん ぐわ〜ん
と泣きわめいていた
やがてその泣き声は
ぐわはは ぐわはは
と転がる笑い声になった
人目を気にしながら
若い母はシャツのボタンを外し
ハンドタオルで隠した乳房を
幼子のとがった唇に吸わせていた
小さいもみじの両手をあてて
小首を曲げて瞳を閉じた幼子は
黙って母乳を飲んでいた
( 周囲に座る他人は皆
( 視線をそらし
( そっぽを向いていた
はだけたシャツのすき間から
ちらっと白い肌は見え
ぼくは膝上に本を開いたまま
ぽかん と口を空けていた
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