まぬがれ/錯春
若い頃の私
若い人と睦みあった が
無知だったので
性欲を昇華する術を持たなかった
仕方なく、一緒に並んで座り
土手の風はさやさやと
耳の中の産毛を撫でながら右から左へ抜けていく
寒い土地だから虫が出るのが遅く
若い私と若い人は暮れるまで河原沿いに
うずくまり
無知だったから風通しが良く
無知だったから膨らんでいた
若い人のゆびは、私のゆびにそっと重なり でも
でも、手に手をとって
手の平をお互いの湿気で湿らすことはなかった
無知だったから
触れるのはくちびるだけで
そこはいつだって火照ってるのに
カサカサに乾
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)