詐欺/深水遊脚
振り込め詐欺がまだオレオレ詐欺と呼ばれていた頃の話。当時私は両親と同居していた。ある日の午前中、たまたま私は一人で家にいてその電話をとった。電話の向こうで泣きながら喋っているのは見知らぬ私!両親のうちどちらかに用事があったのかもしれないが、本物の私が電話を取るとは思っていなかったのかもしれない。フィクションの私は、実は借金をしていた、とか、それが返せなくなっているとか、そういう話を始めた。私は私の名前を告げたが、フィクションのほうは演技に夢中で聞いていない。他のことで手がいっぱいだった私は、電話を切って、すぐに177にダイヤルして話し中の状態にした。5分間そのままにして電話を切った。その後何事も
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