断想 十二/soft_machine
 

こどもの頃棄てたはずの手が
壁の中で指をならしている

むかし山の小川に浮かべた舟が
朝のトイレの水面をはしっている

出会った人も別れた日々を憶えずにはいられない日々
雀たちの六月が、アルコオルと骸骨の中でざわめくと

眠っていたことに
雨音で気がつく

 *

黒猫が何かを狙う夜の仕草が
籠のむこうの見えない何かに
背中を丸めて準備する
病院の鉄柵にからまり
鉄線の静かな発情に沿って
東に流れる霧雨の音で

 *

小蝿の前足はうつくしい…男より
ハンバーガーがずっと内緒話で
乾いてゆくレタスの組成と一緒に
挟みこんだ…プレパラート

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