しずく /服部 剛
 
終電前のファミレスで 
熱く語っていたきみが 
うっかりテーブルに忘れた 
空のペットボトルを  
ぼくは自分のリュックに入れた 

きみのゴミを拾うことで 
自分を少し削れたような 
ちょっと心に苦いような 
不思議な味がひろがった 

別れ際の改札で 
振り返ると立ってるきみに 
手をふって 
背を向ける 

人気(ひとけ)ない
ホームの端(はし)まで歩いて 
柱に凭れ、地面に置いた 
リュックの開いたすき間を
見下ろす 

ペットボトルの内側に 
一粒のしずく 
光った 



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