僕らは僕らを生きるんだ。/もののあはれ
 
朝埼京線の中で
学生の頃好きだった人を見かけたよ
もう十年になるんだね
なんだかやっぱり素敵だね
青臭かった僕の見る目でも
間違ってなかったね

化粧が薄くて色が白くて
どこか悲しそうな瞳で
でも強い意志を感じる唇で
頑張っているんだね
良かったね
良かったよ

あの夏もやっぱり僕は
遠くから君を眺めるだけで
声なんて掛けられなかった
この夏もやっぱり声を掛けられないんだね
たった一駅で僕は降りるんだ
君はこの先どこへゆくのかな

僕らはすれ違い
僕らは振り返らない
僕らは立ち止まる事も無く
僕らは僕らを知らない
僕らのすべてについて

またい
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