列車/iloha
 


色褪せた壁に守られている
懐かしい匂い
ぼくはその匂いをかみしめながら
坂を駆け上る。
水びたしのカフェが
あなたと出会ったテーブルに
傷痕を残す
何かといえば
鉄塔がさえぎる未来
電線が導く現在
ミニチュアの昨日
避けられない政治のトンネルを
くぐるのはきみ
だからもう
突き上げるリズムに
問いかけることをやめないで
一日のうちのほんの一時間が
ぼくの世界を作っている
そのときにこそ
電線が導く言葉
緑の列車が運ぶ未来
十二年前のキスの感触
紅茶の海に飛び込んで
抱き合うきみと僕を
突き抜ける太陽風のノイズ


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