せめて音のない世界で/雨露 流
それは花咲く日を待つつぼみ
幾つもの希望が目の前を通り過ぎる
それを全て切り取って 音のない世界に閉じ込める
一瞬はフィルムに焼き付けられて 不変
希望のその先は知らない
希望が幸福に変わるかどうかなんて分からない
もしかしたら希望は砕けるかもしれない
僕は写真家 絶望を瞳に宿した写真家
絶望の淵から見えるのは希望だけ
全てのものから希望を見つけ出せる
絶望が見据えるのはいつだって希望しかない
僕は目に映る全ての希望を切り取るだけ
それが生業 それが仕事
僕が映した希望に音はない
切り取った瞬間 その一瞬は僕にと
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