アイボリィ/おるふぇ
いとしめやかなアイボリィ
遥々と注がれし、名も知らぬひかり
廃墟に移ろう古代からの縲々たる遍歴に溶けいるようで―
風はどこから来たか
西か? 西は神の湿地、金属の焦げる病の、
東か? 東は優しさに衰えた文明の無機的都市
枯れ草の下で眠る涙を、乙女は芳しい仕草で見つけ、驚く
『はじめからそこには、なにもなかった』
短き命に乱れた、迷い 息吹 どこに巡ろうとも
白い猫を抱いた乙女
目を丸くして、鼓動を鎮めた後、
其の涙、天へと掲げん
風は巡らん、いと遠き天から地へと
どこへ還らん、涙を薄く飲み込んだ色のような―
其の風は、処女の麗しい頬を撫で、傾いた時計のチクタクと悲しい音さえ
喧騒のまた向こうへと、小さく小さく包んでしまう
アイボリィ、
また新しいアイボリィ
千々に限りなく続く、弔いの序列も、
豊かに見せる其れは
今日の日を静かに歌う、たゆみなきひかりの恵み
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