真夏日/山中 烏流
爪先がそっと
水鏡を優しく犯して
小さな波紋たちが
ちゃぷちゃぷと揺れている
指の腹でなぞった
かたつむりの足跡は
今はもう
乾いてしまった
抜けるような空は
白と青の
絶妙なグラデーションで
私を捕らえ
目を離すことを
ここから、消えることを
許そうとしない
(100m先の陽炎)
(溶け始めた棒アイス)
爪先はもう
犯すことに飽きて
ただ、水底に沈んでいる
(置き忘れた扇子)
(硝子玉/風鈴)
指の腹は
行き場をなくして
無意味をなぞりだす
(蝉の悲鳴)
(貫く、光の帯)
私は
目を、閉じた。
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