夜の校庭 /服部 剛
 
夕暮れ 
母校の校庭の隅に立つ 
巨(おお)きい欅(けやき)に額を押しつけ 
涙を絞って泣いていた 

この木のまわりに穴を掘り 
子供だった僕等の宝を入れた 
卒業前のあの頃 

先生、あれから時間(とき)は流れて
好きだった娘(こ)も親しい友も 
みんな何処かへいってしまった 

ずいぶんと 
寂しがり屋な大人の僕は 
涙も枯れた頬のまま 
ジャングルジムの上に登って  
暮れゆく夜の校庭を 
見渡している 


( そこは、二十年前のまひるの校庭 ) 


陽炎(かげろう)ゆらめく校庭で 
駆けまわる、幼い僕等と
教室の窓から見守る 
若き先生の立ち姿。  

聴こえてくるは 
あの懐かしき鐘の音(ね)と

遠い昔のはしゃぎ声 

遠い昔のはしゃぎ声・・・ 







戻る   Point(11)