天使の悪魔/なかがわひろか
 
チャイムが鳴ったので玄関に出てみると
天使が立っていた
私は追われています、かくまってください
僕には断る理由もなかったから
そのまま部屋に上げた

天使は部屋に入るなり
どっかとソファに腰を下ろして
お茶だとかお菓子だとかいろいろと要求してきた
僕は天使を見るのが初めてだったので
まずは思うようにやらせてみようと
彼女の言うとおりにした

ひとしきり食ったり飲んだりをした後に
そろそろ行くわと彼女は言った
僕はまだいたらいいじゃないかと言ったけれど
そろそろここもばれるから、と
彼女はそう言った

彼女を玄関から見送るとき
彼女は
実は私は悪魔なのと言った
どちらでもいいさ
どっちにしても
僕は初めて見たんだから

彼女は初めてにこりと笑って
それじゃと言って
去って行った

(「天使の悪魔」)
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