消えてしまった僕の鼻/なかがわひろか
僕の鼻は齧り取られて
どこかに行ってしまった
僕は自分の鼻の形がとても嫌いだったから
無くなって少しほっとしながら
ひりひりする鼻のあった部分を撫でた
いいにおいや
おいしいにおいが嗅げなくなったのは残念だけど
世の中には臭いものもたくさんあるから
僕は無い方がいいと思う
僕は寝たきりのおばあちゃんの部屋に
毎日お見舞いに行くようになった
前は臭くて臭くて
早くいなくなってくれないものかと
思っていたものだった
僕はそれまで嫌悪していたいろいろな物に
優しく接するようになった
鼻を齧り取られたときは
多少残念な気持ちも
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