大切な箱/mayaco
 
大切にしていた箱が
最近とうとう見えなくなった

白い輪郭を今でも覚えている
美しいと思えるものを
美しいのだと思いこんでいたものだけを
少しずつしまっていった

一番最初に消えたのは温もり
確かに聞こえていた鼓動
再生をくり返していた確かな感覚

次に消えたのは色
映し出されていた映像
最後に見た一番好きなシーン

その次に消えたのは記憶
思い出すたび訪れた混乱
いつしか順番が分からなくなる

気付くと消えていたのが苦痛
同時に消えていた期待
どちらが先だったのだろう

最後に消えたことに気づけたのは幻
そしてたどり着く現実
消えずに残ったものは箱の中

でも
もう私にはその箱が見えない

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