六月の湿度/ku-mi
 
六月の湿度が肩に降りつもる
いつかの唇のように柔らかくあたたかく
黒髪にからみついた結晶
はじけて香る 夕立

銀色の坂の向こう
ちいさな教会の鐘の音がする
ふいに横切る上りの急行
遮断機の音に今になって気づくの

汗ばんだ左手を覚えている
いくら小さく折りたたんでも
しまいきれない記憶


あなたはいつか
柴犬を飼うのでしょうか
もしも女の子が産まれたら
あの名を付けるのでしょうか


百年後に
もう一度あなたと出逢いたい
それまでどうか
幸せでいて欲しい

溶け出したガラスのような町で
私の息は何を形作っていくのだろう
少しやけた胸元にも六月の湿度
ぬぐっても ぬぐっても
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