青いランドセル/たちばなまこと
裏通りに 傾いた陽が落ちてくる頃
放課後の声たちが 初夏の帯にのって
泳いでくる
バギーの乗客を覗いて
ほんのり口角を上げて
青いランドセルが追い越してゆく
まだかたそうなランドセル
さらさらのランドセル
ふでばこのえんぴつが
雨の予感を抱きながら 鳴っている
電信柱の下にかがんで
その小指みたいな花に
新しい友だちのことを 話しているのかしら
「あのね」で始まる町の物語
通学路なのにあぶない人が多いとか
だけど信号が一つしかないのがいいんだとか
車には気をつけなくちゃいけないとか
ピンポン球みたいに
ころころ ぴょんぴょん ついてくる
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