青炎ノ人 /服部 剛
 
今日出逢う
目の前で俯(うつむ)くの老婆の手を 
わたしは両手でつつみ、
握るだろう。 

この世界の何処かで泣いている人よ 
暗闇から差し出される 
この手が、君に見えるか 

目の前にいる老婆の瞳の内に  
遠い空の下にいる君の瞳は透けて 
じっと見つめると、重なる。 

君のいる暗闇の向こうへ 
投函した手紙 
便箋に綴(つづ)った一行の声援 


「 君を想い、今日を生きるよ。」        


( わたしは加熱する、青い炎。 
( 闇に燃える、無音の踊り、
( 乱打する、太鼓の如き胸の鼓動。 

離れた場所の暗闇に
独り震える君の手を 
包もうと差し出す 
この両手が
その瞳に見えるように 

わたしは今日も
俯く老婆に逢いにゆく 







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