記憶のかけら/あずみの
 
あなたが好きだったアーティスト 
なんだか鼻について嫌いだったわ 
あなたが好きだった作家 
なんだか生き様が嫌で好きになれなかったわ 
あなたが好きだった食べ物 
なんだか食感が妙でおいしくなかったわ 
天邪鬼なわたしはそうやって 
あなたと違うことを強調することで 
ひとりの人間として見てもらおうと 
きっと必死にもがいていたの 
そんなわたしをあなたは 
何も言わずにただ 
優しい目で見守ってくれていたわ 
幼いわたしにはそれさえも苛立ちだったけれど 
でも不思議ね 
嫌いだったアーティストも作家も食べ物も 
自分が好きなものよりずっとずっ
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