少し、好きになりました/なかがわひろか
 
少し、好きになりました

雨上がりの水溜りに
顔を映して
笑ったり、怒ったりしているあなたを見て

少し、好きになりました

煌々と照る月明かりの下で
自分の影を一生懸命に
追いかけているあなたを見て

少し、好きになりました

首吊り桜の木の下で
大きな口を開けて
桜の花びらが舞い込んでくるのを待つ
あなたを見て

少し、好きになりました

毎晩眠る前に
宇宙に続く入り口の
鍵を何度も確認するあなたを見て

少し、好きになりました

夜と朝と昼が一緒に来たら
どんな色になるだろうと
そんな風に言うあなたを

いつしか私は

好きになっていました

(「少し、好きになりました」)

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