少し、好きになりました/なかがわひろか
少し、好きになりました
雨上がりの水溜りに
顔を映して
笑ったり、怒ったりしているあなたを見て
少し、好きになりました
煌々と照る月明かりの下で
自分の影を一生懸命に
追いかけているあなたを見て
少し、好きになりました
首吊り桜の木の下で
大きな口を開けて
桜の花びらが舞い込んでくるのを待つ
あなたを見て
少し、好きになりました
毎晩眠る前に
宇宙に続く入り口の
鍵を何度も確認するあなたを見て
少し、好きになりました
夜と朝と昼が一緒に来たら
どんな色になるだろうと
そんな風に言うあなたを
いつしか私は
好きになっていました
(「少し、好きになりました」)
戻る 編 削 Point(5)