或る雨の夜に/朽木 裕
 
(強がる心は知らぬふり 
くちびるが嘘をつくから、ね) 
夜の糸は はりつめて 
私と貴方を繋ぐのでしょう 
その糸をゆっくりゆっくりと 
地獄から手繰り寄せるもの、有り 
からりからまるその糸が 
首にかかったが、最期 
三日月が血を得て笑う 
音もない雨のような殺人に 
君は目を大きくして驚くのでしょうか 
怒り心頭といった状態で私をぶつのでしょうか 
音もなく雨 赤い赤い雨 
やさしい君は私を抱きすくめて云いました 
ごめんね 
指先から蜘蛛の糸 
私は酸素を失いただ泣きぬれたのでした 
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