草刈合戦/錯春
をかぶせた。
小さな頃、河縁で遊んだとき、水色のシャツが
長い草の間をぬって、みえた。
翌日の地方紙の見出しに
【痴情のもつれで中年女性殺害される。遺棄の場所は江合河の橋桁の下。】
と、ちんまり載っていた。
田舎では、おばさんでさえも
殺されるくらいの恋愛をするんだな。
それでも刈っていくと
味噌蔵があらわれた。
3人目の祖母が使っていたという、小さな蔵。
今では手入れする人もいなくて
蔵からは痛んだ味噌と
それに混じって骨のにおいがした。
嗅いだことがあってもなくても
人は人のにおいがわかる。
私は蔵にお尻を向けて、今度は逆に刈り出
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