梅の神さん/錯春
庭には二羽ニワトリがいなかったが
代わりに二本の立派な梅の木が鎮座していらした
毎年刈り込まれているのにその枝は猛々しく
同じく喧嘩っ早い私の手にもがれ
その実は強靭で、小学生の手の平を占領するくらい
ぽってりと官能的な飴色をしていた
大きな梅は決まって片面だけ熟して黄色で
かたっぽはひんやりと青く
平たい竹のザルの上に青いおしりの方だけ上へ向けて転がし
熟すのを促した
たまに見に行かないと
ぐずってザル一面をびしょびしょにした
かわりに
そっと掬い上げると
たまに照れてあかくなった
大きなプラスチックの樽にざあらざあら
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